Smoky life in Rochester

Rochester大学にポスドク留学中の日記。膠原病専門。

飛行機で見た映画

ロチェスター4日目の朝です。明け方からけっこうな雨が降ってきました(⌒-⌒; )。

2日目まで不安増し増しだったのですが、3日目はやるべきことが一応できたこともあり、少し気持ちに余裕が出てきました。具体的には大学のHuman resource officeで手続きをしてきたのと、アパートにWifiモデムが届いたのでこれを開封してactivateを完了しました。基本ペシミストなので、「きっと何かのトラブルでうまく繋がらないだろうな。そしたら最悪ホテルの宿泊を延長しようかな」なんて思っていましたが、思いのほかスムーズにできて、だいぶ安心しました。これでまぁなんとかお家にいながら、色々と策を練ることはできそうです。

それと、こちらに来る前に一度だけ連絡していた日本人研究者の方に改めて連絡していたのですが、今日返事があって、もうすぐ日本に帰国するので引っ越し作業の真っ只中とのことで、なんと机や寝具を譲っていただけることになりました。これは大助かりです。ということで、ちょっとずつですが、軌道に乗ってきたのかな?と思いながら、今日は鼻唄を歌って歩きました笑 

今日はトータル6kmぐらい歩いた気がします。そのうち万歩計アプリで測ってみよう。

どこもかしこも街路樹が綺麗です。大きなプラタナス

ロチェスターを縦断するジェネシー川



さて、今日は行きの飛行機で見た映画を忘れないうちにメモっておきます。是枝監督の『怪物』、『ワンダー 君は太陽』、『私は確信する』を見ました。『怪物』は、とある出来事について、冒頭の火事のシーンをメルクマールにして複数の視点から語り直すという構成をとっています。第一部で安藤さくらの親子の視点で、学校教師達の官僚的な態度に業を煮やしていく過程が描かれますが、第二部ではまた物語が元に戻り、今度は永山瑛太演じる新人教師の視点で語り直し、第三部でもまた、という感じです。カンヌで脚本賞を獲ったわけですが、この構成自体は最近結構流行りでちょくちょく見かけるものですよね。一番顕著だったのが、キーラ・ナイトレイ主演の『つぐない』ですが、最近だと『ナイブズアウト2』がこの構成を取っていました。要するに、ある視点から見ると被害者に見えても、別の視点から見るとそうでもない、とか、そんなような説話的な効果があるわけですが、私は正直言ってこの構成が大嫌いです。単純な物語に複数の視点を絡ませて、その意味世界を膨らませていくというのは、もちろん映画芸術の原則と言ってもいいぐらい大事なことですが、でもそれはわざわざこんなふうに、同じ話を別の視点で順番に語らなきゃいけないわけではなくて、群像劇にすればいいわけですね。それをわざわざ時間をかけて、別の視点から語り直すというのは、「まずこっちから見てみましょう。ね、では今度はこっちの視点から見てみましょうね。はい、次はこっち」と、指導されているようです。『怪物』でも、第一部であまりに不可解な永山瑛太の言動が、第二部になると理解可能になる、というような「種明かし」になっているのですが、「種明かし」というのは、やっぱり「説明」に過ぎないわけですね。映画は説明するメディアではないはずです。ということで、あんまりこの作品も、この作品に脚本賞が授与されたことも、納得行きませんね笑

『ワンダー 君は太陽』は素晴らしかったです。顔面の構造が「崩れている」障害を持って生まれたオギーが初めて学校に行って、いじめを受けたりしながら、最後にクラスの人気者になっていくサクセスストーリーです。実はこの作品も、最初に複数の人物を立て続けに紹介していく過程で、同じ出来事が反復されることがありますが、この映画の場合、それはあくまでストーリーテリングの効率性を重視して行っているようにみえ、怪物ほど気になりません。
終始泣きっぱなしでした。

最後はフランスの法廷ものの『私は確信する』ですが、これも結構面白かったです。フランスの実際の冤罪訴訟を題材にした作品なのですが、映画の最後のクレジットで明かされるように、本作の主役である、裁判に首を突っ込む女性料理人は完全なフィクションということで、ちょっと感心してしまいました。事件に首を突っ込み過ぎて、だんだん狂気的なまでに熱中して周囲からも咎められる、という展開は結構好きなんですよね。舞台が2000年前後なのですが、入手した音声記録が入ったCDを何時間も聴き続けて、徐々に真実に近づいていくというところが良いですね。私も電子カルテ〜紙カルテを漁って、徐々に断片的な事実を拾い上げながら全体のストーリーを形成していく過程が大好きで、これが好きで医者を続けていると言っても良いですね。主人公が音声に聞き入って、メモを取っていくというアクションをしっかり描いているのが好感持てました。

 

 

そうそう、ロチェスターに行く前は、着いたらすぐイーストマン博物館の会員になって毎晩映画見に行こうとか思っていたのですが、全然そんなことになっていないですね苦笑 それでもちょっとずつ気持ちが上向いていきました。時差ぼけが残っているせいか、10時就寝、4時起きみたいになってしまっていますが。

あと、まだホテルにいるせいか、これから年単位でここに暮らすなんていうのが、いまだに自分のなかで信じられていない感じがして、ちょっとまだフワフワしています笑

ではまたー。(雨やんだ!)