Smoky life in Rochester

Rochester大学にポスドク留学中の日記。膠原病専門。

Encampment

今日は朝ご飯を食べに、近くのダイナーに行きました。マジ美味かったです。これで6ドルなんで言うほど高くないです。

 

 

マウスの細胞培養ですが、一応前回のおさらいをしておくと、私とトレーナー双方が、私の培養液と培養器で培養失敗し、トレーナーの培養液と培養器で成功したところでした。今週は私の培養液とトレーナーの培養器で(今回は私のみ)培養を開始し、本日途中経過を観察したところ、何とめちゃめちゃ細胞が増えていました!感激!

この、細胞がちゃんと増えてて嬉しい!っていう経験は人生で2回目ぐらいで、最初は院生時代に、培養液交換をさぼったせいで死にかけていた細胞株を何とか粘って培養して、数日後にシャーレ一面に元気な細胞株が広がっていたのを見たときですね。なんか、こんなこと言ったら怒られると思うんですが、医師の中村哲さんが、アフガニスタンで現地の人たちと手作りで用水路をつくったことがありましたよね。彼の死後、それを撮ったNHKのドキュメンタリーが再放送されていたんですが、荒野に用水路を引いて、植物を育てたら、本当に緑がぶわーっと広がっていて、その光景には涙が止まりませんでした。(頼むぞ〜)と祈りながら顕微鏡を覗いて、細胞がぶわーっと増えていたときの喜びって、それを彷彿とさせます。

まぁとにかく良かったです。久々にボスに、「やりました〜!」って単なる報告だけのメールを送ってしまいました。

 

ところで、コロンビア大学で学生たちがテントを張って野営デモをしていて、警察が突入する事態に進展したのをきっかけに、全米の大学生たちが同じように野営デモを展開しています。彼らが掲げているのは、ガザ停戦、イスラエルはジェノサイドをやめろということと、自身の大学にイスラエルとの経済的な関係を切れということです。こういうのを(investmentの逆で)”divestment"というらしいです。
ちなみにここ数日で、結構いろんな大学で警官が突入していて、昨日はアトランタのエモリー大学で警官が入ってきて、何と哲学科の教授(ノエル・マカフィー先生)が逮捕されたり、ほかにも老齢と思われる女性教授が地面に顔を押し付けられて逮捕されるという信じられない動画がネットでも拡散していました。実はロチェスター大学でも、医学部とは別のメインのキャンパス内で野営テントがはられています。今回のイスラエルの問題は、アメリカの大学文化を激しく直撃していますね。数ヶ月前には、公聴会ハーバード大ペンシルベニア大、MITの学長が呼ばれて、共和党議員が「デモ学生が反ユダヤ的な発言をする自由はあるか」という質問をしました。そこでUPennの学長が「それは文脈次第」と少し「逃げ腰」な説明をしたことで炎上し、辞任に追い込まれました。ハーバードの学長も同様の対応で、そのときは周囲のサポートもあり一時留任しましたが、しばらくしてから論文の盗用だか何だかを疑われて辞任することに(この論文盗用疑惑も共和党陣営による激しいキャンペーンが行われました)。で、こういった事例で、やはり背後にイスラエル・ロビーの存在があるとか言われますよね。ウォール・ストリート系の資本家のなかにそれなりにシオニストがいて、大学のファンディングにも相当程度影響していると聞きます。どうなんでしょうね。

ということで、朝のミーティング中に我がロチェスター大学の理事会を調べてみました。こちらがBoard of trusteeのメンバーですね。

Board of Trustees - About the University of Rochester

ここで理事会のトップにいるRichard B Handler氏を調べてみると、10月7日の事件のすぐあとにイスラエルへの支援金を集めたりとかなり積極的に活動していました。まぁこの問題について明言しているわけではないので断定は避けますが、いずれにしろアメリカの名門私立大学というのは、経営に携わる資本家達の影響を受けてしまうという弱みがあると言えます。

ロチェスターでは、今のところ平和的に物事が推移しており、少なくとも大学のアカデミックアドバイザーの方は、表現の自由の範囲ということで承認されているようです。

www.wxxinews.org

 

ちなみにシオニストシオニズムなんですが、鶴見太郎先生の『イスラエルの起源』などによると、ヨーロッパでの苛烈なユダヤ人迫害、ホロコーストを経て、「俺たちユダヤ人は人が良すぎてみんなにいい顔しているけど、いざ戦争や内戦が起こると結局迫害される。国家と軍隊を持ち、強いユダヤ人にならねば」というような思想的バックグラウンドがあるようで、それが現在の国家としてのイスラエルのある種の妥協のなさというか、執拗な攻撃性につながっているということです。まぁしかし、まさか白昼堂々、警官が大学のキャンパス内で教職員を逮捕することになるなんて。。大学は誰のものなのか、という問題を否応なく突きつけられますね。(もちろん、これだけ全米で抗議行動が広がりを見せているということ自体に、アメリカの強さがあるとも言えますね。学生たち、なんて立派なんだ。)