Smoky life in Rochester

Rochester大学にポスドク留学中の日記。膠原病専門。

イーストウッド

これ酷くないでしょうか。

news.yahoo.co.jp

これ、"Silent march France"とかで検索すれば色々と記事が出てきますが(たとえば

Thousands united in silence at Paris march for peace)、基本的にどちらのサイドにも立たず、政治的な主張を書いた看板の代わりに真っ白な横断幕を持って、パリのアラブ世界研究所を出発してホロコースト記念館まで歩くデモだったのです。これに対して「反ユダヤ主義に抗議するデモ」というタイトルをつけるのは、どう解釈しても大間違いだと思います。
それにしても凄いメンツです。横断幕の中心にいるのは、イザベル・アジャーニですね。クロード・ミレールの『死への逃避行』は、イザベル・アジャーニが文字通りの七変化でさまざまな衣装に身をまといながら残忍な人殺しを続ける70年代の傑作スリラーです。

 

今週はThanksgivingです。独り身の私とPhD学生は、ボスの家に招かれる予定になっているのですが、そろそろ髪がボサボサになってきて、この格好でお伺いするのは気が引けると思い、雨のなか(初)バーバーに行ってきました。カレッジタウンの中にある床屋さんなので、若者がアポ無しで来てさっさと切ってもらうような雰囲気でした。バーバー英会話は学習したことがなかったのでひとまず1ヶ月前の自分の写真を見せて、これでよろしくと言って切ってもらいました。最初から大胆にバリカンを使って時短したおかげで15分ぐらいで終わりました。途中もみあげのところを刈り上げるかどうか聞かれたようなのですが、なんて言ったのかよくわかりませんでした。Do you want here cut up?って聞こえたのですが、調べてもそういう使い方はしなさそうで、語感があうのは"cropped"でしょうか。とりあえず"No, leave it natural"と言ったらなんとなく了解してもらえ、もみあげを守り抜きました。

この床屋の壁に若き日のクリント・イーストウッドの写真が貼ってあったので、"I love him!"と言ったら向こうも反応してくれて、ちょっとイーストウッドトークをしました。そのまま機嫌良く帰ろうとしたところ、"Hey, do you know 'Goodfellas'?"と聞かれたので、"Of course, I love it!!"と答えたら、イーストウッドの写真の隣にかけてあった絵を見せてくれたのですが、なんとこの絵が映画『グッド・フェローズ』のモデルになった元マフィアのヘンリー・ヒルが描いた絵だということでした。
("Ha?? Henry, played by Ray Liotta??" "Yeah! That's right!" "OMG!")ちなみにフロリダの橋で人を逆さにして楽しんでる絵でした。

 

最近は、ひとまず着手する研究が決まったのですが、必要となっているハンズオンのトレーニングが済んでいない関係で、一人でフローサイトメトリーを動かしてはいけないため、ラボの研究者と予定を合わせてそのうち行うこととして、それまでのあいだ、関連論文を読み漁って染色抗体や研究の方向性を検討しているという状況です。最近とある研究室が行った研究にインスパイアされて、同じセオリーのもと、別の免疫細胞に着目してみようという感じの研究テーマなのですが、普通にやっただけではオリジナリティが出なさそうだし、そもそも元の研究室でも発表していないだけで実際はやってるのでは?という疑念が拭えないというのが正直なところなので、オリジナリティの糸口として少し古めの論文も含めて検討しているところです。あまり実らなければそのままお蔵入りかもしれません。

ある程度あるあるだと思いますが、英語論文を読んでいるとなかなか思うように読み進められないことがあって言葉の壁のせいにしたくなることがありますよね。しかしよく考えてみると日本語の論文やテキストでも気づいたら1時間ぐらい同じページを見つめているだけということもありますから、あまり気にしないようにしています。また、確かに量をこなすべきタイミングはありますが、その大半は最終的に自分の研究には直接役立たないわけですから、進まないときはそんなものだと思って、集中できるときにばーっと読んでしまうのが良いと思います。ちなみに昨日は結構集中して読みましたが、今日は微妙でした。

このこととも関係しますが、普段から英語で読む習慣をつけようと思って、Penguin Readerで本を一冊買いました。

Jason Stanley先生の"How Facism Works"という200ページぐらいの本です。2018年に出版されて、日本でも翻訳が出ているようですね。

青土社 ||歴史/ドキュメント:ファシズムはどこからやってくるか

なぜこの本にしたかというと、先日たまたまGuardianでStanley先生の明快なコラムを読んだからでした。

My life has been defined by genocide of Jewish people. I look on Gaza with concern | Jason Stanley | The Guardian

Stanley先生はユダヤ系の哲学者で、上記のコラムで今回のイスラエルのガザへの空爆、地上侵攻を批判しています。非常にロジックが明快で読みやすいということもあり、この先生の本を読んでみようと思いました。

内容としては、2010年代に入って、トランプのアメリカのみならず、インドやポーランドハンガリーなど多くの国で全体主義的な政権が生まれていたり、あるいはフランスのように極右政党が台頭したりといった状況に対して、ファシズムがどのような戦略で権力を取り、大衆へとアプローチするのかということをファシズムの歴史と現代政治を行き来しながら語っていきます。こうしたテーマの本は昨年も何冊か読みましたが、特にピュリッツァー賞を受賞されたアン・アップルボーム先生の『全体主義の誘惑』、イワン・クラステフ先生の『模倣の罠』などが面白かったです。ポーランドハンガリーは反EU、反移民を掲げ、メディアをコントロールすることで、長いこと極右政党が政権を握っていましたが、ポーランドは先月の総選挙でようやくその法と正義という与党が単独過半数を失い、中道派が政権に返り咲くことになりました。EU、リベラル側は結果に安堵したのではないでしょうか。

ではまた。