Smoky life in Rochester

Rochester大学にポスドク留学中の日記。膠原病専門。

Raw deal

今日はイーストマン・ハウスのDryden Theaterで、アンソニー・マン監督の『脱獄の掟』(1948)の上映でした。35mmフィルムでの上映でしたが、確か紹介のときに、フィルムはマーティン・スコセッシの所蔵品と言っていたような気がします。スコセッシはフィルムの保存・修復の活動に熱心なことで有名ですが、アメリカに来るとこんな贅沢なフィルム体験ができるのですね。映画は文句なしの大傑作で、どのショットも光と影の見事なコントラストに彩られ、それも決して単に審美的な表現にとどまるのではなく、天井や炎、霧といった装置によってその場の空間が芸術的に歪んでいます。凄いのが、犯罪映画と言いつつ、終盤まではそれほど派手なシーンはなく、むしろ人物の位置関係とカメラのポジションが雄弁にその場の状況を物語っていくことでサスペンスを生んでいることです。それなりに充実した物語内容でありながら、79分という尺におさまっている点も、この当時のB級映画の美徳ですね。
木曜の夜に40年代のフィルムノワールを見に来る人なんてそんなにいないだろうと思っていたのが、普通に50人ぐらいは来ていてびっくりしました。
しかも上映後は館長によるショットを振り返りながらのミニトークがあり、Q&Aではたくさんの人が質問していました。

アメリカといっても、ここは人口20万人の小都市なのですが、それでもこういったシネクラブ的なイベントが成り立ってしまうとはまったく恐ろしいことです。
いやぁ、いいところに来た。是非ここの常連になって映画の話で盛り上がりたいな、と思いました。

ではまた。