Smoky life in Rochester

Rochester大学にポスドク留学中の日記。膠原病専門。

Anatomy of a Fall

昨日まで最高気温4度ぐらいで結構寒かったのですが、今日は一転、13度ぐらいまで上がりまして、フリースなしで過ごせました。ちなみに昨日までは、Tシャツ→セーター→フリース→ウィンドブレーカーという感じでレイヤリングしていました。3枚目にダウンを着る人も多いと思いますが、もこもこして動きにくいので、仙台でもこのスタイルでしたね。でもこちらの真冬は-20度まで行くみたいなので、そのときは潔くダウンを着る予定です。

昨日は朝からボスがプロジェクトのプレゼンをしたあと、ラボの研究者のPRがあり、それだけで半日終わりました。ミーティング自体はずいぶん長い気がしましたが、割と和気あいあいとした雰囲気で、あんまり張り詰めた感じはありません。ボスがすごく平易な英語でゆっくり、でも軽やかに喋る方で、彼女の人柄ゆえに研究室全体の雰囲気もすごく良い気がします。本当にボスの英語だけは(!)99%聞き取れるので、かなり助かります。ドイツで研究している友人が、「ボスだけは俺のカタコト英語を聞き取ってくれる!」と言っていたのを思い出します。こういうある種のコミュニケーション能力、その場をより開かれたものにするような言語運用能力って、トップの重要な資質なのかもしれませんね。
夜はボスの家で軽いパーティがありました。ボスおすすめの、ロチェスターのローカルワインをもらい(少し甘め)、みんなで出前を頼んでそれぞれ食しました。自分のサラダだけがスモールサイズでしたが、たぶん250gぐらいあったのではないかと思います。メインディッシュにアーリオ・オーリオのパスタを頼んでいたのですが、うーん、自分が知ってるアーリオ・オーリオではなかったですね。自分が知ってるアーリオ・オーリオは、セガフレード・ザネッティのやつです。そしてやっぱり全体的に量が多く、日本でさえ少食すぎて心配される自分が食べ切れるはずもなく、デザートに出されたケーキもほぼ残してしまい、申し訳ないのでお持ち帰りしました("Can I get something to wrap them?", "Sure!")。しかしみんなのお喋りはまだ半分も聞き取れないですね〜。以前、武蔵大学の北村紗衣さんがどこかでのエッセイで、留学した当初は何も聞き取れなかったけど、とにかくみんなが笑うところで笑っていたらそのうち聞こえるようになった、てなことを書いてらしたので、こっち来てからはそれを心がけています。まずは体を英語のリズムになじませるような意味合いなんじゃないかと思います。

今日は初の週末だったので、(本当はループス関連の講演会があったのですが)午前中はダラダラして、午後にバスでダウンタウンの方へ行きました。最初の目的地はジョージ・イーストマン・ハウスです。ジョージ・イーストマンはロチェスターで育った人で、コダックフィルムを開発した人なのですが、イーストマンの生家が博物館、ギャラリー、映画館になっています。博物館で読んだことを思い出しながら書くと、以前からカメラ・オブスキュラといって、穴の空いた暗室で外の景色を壁に映し出される現象が知られていましたが、それを定着させて写真に残す、いわゆるカメラの技術ができたのは19世紀になってからです。最初はダゲレオタイプから始まり、だんだんと現代のカメラへと進化していきました。そのなかでもイーストマン氏が発明したロールフィルムは、それまではプロのカメラマンでないと撮影ができなかったのが、誰でも簡単に撮影することを可能にしました(一部Wikiも参照しました

ジョージ・イーストマン - Wikipedia)。そういう意味では20世紀の映画の時代を超えて、現代のインスタ、TikTok文化の基礎をつくったといってもいいかもしれませんね。博物館のなかにはカメラオブスキュラの体験コーナーがありましたが、あんまりよくわかりませんでした。ちなみにイーストマン氏はコダックフィルムの成功で巨万の富を築き、ロチェスターの医・歯学部、イーストマン音楽学校を設立しました。ロチェスターイーストマンの庭なんですね。

お家の全景を撮り忘れたので、フィリップ・シーモア・ホフマン銅像で勘弁(笑)

なんとロチェスター出身

イーストマンハウスにはDryden Theaterという映画館が併設されていて、ほぼ毎日7時半から映画を上映しています。今日は見ませんでしたが、明日はロバート・シオドマクをやるらしく、見ないわけにはいかない・・・。今日はこちらではなく、ここから歩いて10分ぐらいの場所にある、The Little Theaterという映画館に行きました。日本で言うミニシアター、英語で言うとArt houseという言い方になりますかね。イーストマン・ハウスとThe Little Theaterが同じEast avenueにあるのですが、盛岡でいうところの映画館通りですね!

今日はカンヌでパルムドールを受賞したこちらを鑑賞しました。

Anatomy of a Fall  手ブレが。

最近フランス映画は法廷者が結構多いですね。仙台でも先日、『サントメール ある被告』を見たばかりです。タイトルはプレミンジャーの傑作法廷劇"Anatomy of a murder"をもじっていると思われます。『サントメール』のかなり明確で統一されたスタイルに比べると、本作は場面ごとにさまざまな演出を駆使している印象です。回想、想像的な映像、写真、VTR映像など多様なイメージを織り合わせながら、真実、あるいは真実の周辺をぐるぐるするような志向ですね。最後に子供の証言がキーになる展開は、私の大好きな『スウィート・ヒアアフター』を思わせました。

150分、あまり飽きずに見れる作品になっていますし、良い場面もいっぱいありますが、もう一つ刺激を欠いているようにも思いました。本作はフランス資本でドイツやフランスの俳優が出演していますが、フランス語と英語が話されていました。主演のザンドラ・ヒュラーの英語が聞き取りやすくて助かりました!笑 

ちなみに料金は大人一枚で9ドルでした。あらゆる面で日本より物価が高いアメリカですが、映画だけは日本より安いですね。全部で5つスクリーンがありましたが、100人以上座れてスペースもゆったりしていて、いやぁこれはいい映画館ですね。大阪の第七藝術劇場のスクリーンが5つあるような感じです。映画泥棒とかの余計なCMも無くてGood!です。エンドクレジットになった途端に、べちゃくちゃ喋りながらぞろぞろ帰り出すあたりは「おいおい!」となりましたが、終映後に座ったままdiscussionし続けるご婦人や、劇場の外で、"There's no action except a fight, but very suspensful!!", "Yeah!!"と興奮気味に語り合う若者など、日本のミニシアターではあまり見られない光景がナイスでした。

問題は、バスが1時間に1本なので、タイミングによっては30分ぐらい暇を潰さないといけないのですが、バーやレストランはあっても、ちょっとしたカフェが見当たらないので、そこが今後の個人的な課題になりそうです(笑)。今日は帰りに映画館のトイレに行けばよかったのに、行かずに30分ぐらいバスを待って、バス停から家まで猛ダッシュで帰ってなんとか間に合いました。日本でやるような、コンビニに入って、いきなりトイレに入ると露骨だから、ちょっとドリンクコーナーを見るふりをしながら、自然な流れでトイレに入るみたいなチートができないので、行ける時にトイレに行くべきですね。

ではまたー。