Smoky life in Rochester

Rochester大学にポスドク留学中の日記。膠原病専門。

カモメ

今日は初出勤でした。

ラボの研究者と入口で待ち合わせていたのですが、意外とわかりにくくて結局ヘルプの電話をして誘導してもらいました。("Maybe, I'm in the wrong direction, help me!")
ようやく合流できたあと("I'm so sorry for keeping you waiting outside")、ひたすら迷路のような医学部校舎(校舎っていう表現がまったく合わないw)を案内してもらい、おそらくはどこでも恒例の、覚えられるわけがないのに立て続けにラボのメンバーを紹介されて挨拶をし続けるという展開。(一度挨拶したっぽいけど名前全然覚えてなくて、けど名前聞き直したら失礼だし・・・)っていう陰キャあるあるの流れがほぼ確定しました。まぁ良いんですけどね。そして肝心のボスは忙しくて会えず。

んで、その後に大学のIDバッジを発行するまではスムーズに行ったのですが、大学専用のメールアドレスの案内が待てども全然来ない状態が続き(専用のアドレスとパスワードがないと、必要な講習とかが受けられない)、なんと椅子に座って向かいのおばちゃんと喋ってるだけで1日が終わってしまいました・・・。気のいいおばちゃん(立派なリサーチアシスタント)なのですが、まぁよく初対面の小僧相手にこんなに延々と喋るなぁと半ば呆れながらも、仲良くしてくれることに感謝して、そのまま帰宅(爆)。

 

さて、仙台にいるときから週1の英会話に通っていたのですが、そこの先生がおすすめしてくれたのが、WNYCというラジオ局が運営しているradiolabというポッドキャストのサイトです。
ポッドキャストは今や無数にありますが、radiolabが良いのは全てのエピソードにtranscriptがついていることです。なので、リスニングや表現の習得に最適です。
内容は大学のリベラルアーツのちょっと軽い感じのものが多いですね。

まぁしばらく聞いていなかったんですけど、こちらに来てみるとまた学習意欲が少し湧くというもので、この数日久しぶりに聞いていました。

今回聞いたのがこちら。

The Seagulls

70年代に鳥類学者と人類学者のカップルが、サンタバーバラの島でカモメの巣を見つけたのですが、そのうち約10%がメス同士のカップルでヒナを育てていたということを発見し、これを論文としてScienceに出したという話から始まります。これが当時のゲイライツムーブメントにとても大きな影響を及ぼしました。というのも、当時はまだLGBTQに対する差別が今以上に強力にあり、多くの国や州で同性愛が法律で禁止されていました。その根拠として、トマス・アクィナスの言った「同性愛は自然への犯罪」という理念でした。そこに「同性愛のカモメ」の発見がその理念に風穴を開けたということですね。
エピソードのトークでも言及されていますが、一方では、セクシャル・マイノリティの人たちがもつ(あるいはマジョリティが押し付けている)「自然からの疎外感」、「自然界に自分達の基盤foundationが無い孤独」というものが、こうした科学的発見によって覆されるというメリットがありますが、そもそもなぜ同性愛が「自然か不自然か」ということでジャッジされなければならないのかという問題もありますよね。

そもそも人間と自然、という分け方自体が非常にバイアスのかかった見方であることは間違いないですよね(だからダメとはなりませんが)。人間もまた自然界から出現した存在である以上、人間がつくりだす「人工物」もまた「自然」と言えなく無いのですよね。でもそれでなんでもかんでも自然だというふうにしてしまうと、今度は人間の所業による環境破壊、自然破壊の問題を問えなくなってしまうから、やはりどこかに線引きが必要だと思います。工場からの排水とサバンナのライオンを同じ「自然」とはやはり言いにくいですからね。

医療の世界でも、例えば人工呼吸器やカテーテルはなるべくつけずに「自然なかたちで」看取る、みたいな表現がよく無自覚に使われます。ここでいう自然ってなんなんでしょうとつい考えてしまいますよね。入院していることは自然で、人工呼吸器をつけるのは不自然なのか、とか。おそらくは自分達が無自覚にラベリングしている「自然」という言葉を、その都度パラフレーズしていき、どういう意味で言っているのかということに自覚的になることが大切なのだと思います。

ではまたー。