Smoky life in Rochester

Rochester大学にポスドク留学中の日記。膠原病専門。

Nye

先週末に実験を詰め込みすぎたせいで、今週前半はめちゃめちゃイライラしていましたw 患者の検体からリンパ球を分離するごく単純な作業があって、いま私の研究用に集めてもらってるんですが、テクニシャンのおばちゃんが何かと理由をつけてやりたがらない雰囲気を出してきて、面倒くさいので僕がやることにしていて、今回も僕がやっていたんですが、なんかやってるうちに「なんで俺がやらなアカンねん、クソが!」とイライラしまくってテクニシャンを何度も睨みつけていました笑 水曜日のボスとの面会を終えたあとは、木曜日は午前中ずっと家で寝て、午後もラボでぼーっとしていました。金曜日はラボミーティングだったので、特に疲れることもなく、ほどほどで帰宅してようやく回復してきました。

金曜日は回復を加速させるために、ひさびさにダイナーで朝食をとりました。

前回はホットケーキだったので、今回はフレンチトーストに。

 

本日は映画館で、ナショナル・シアターのライブ中継(National Theater Live Streaming、日本のシネコンでもやってますよね確か)で、『Nye』という作品を見てきました。

Nyeというのは、Nye Bevanというイギリスの保健大臣を務めた労働党の政治家で、第二次大戦直後に、NHS(National healthcare Service)を立ち上げた人です。いわゆる「ゆりかごから墓場まで」という言葉に代表されるイギリスの福祉国家政策の最も大きなステップの一つですね。それまであった民間病院を全て国営化して、誰でも無料で必要に応じて(by the need, not the ability to pay)医療が受けられるようになりました。NHS設立の歴史はイギリスの社会主義〜リベラル層にとっては一つの武器というか誇りになっていて、サッチャー政権などの保守党政治家の新自由主義的政策によって大きく毀損されてしまったという問題意識が共有されています。例えば、ド左翼で知られるケン・ローチ監督は『1945年の精神』というドキュメンタリー映画でNHSの歴史を取り上げていますし、同じく左翼のダニー・ボイルロンドン五輪の開会式のディレクターを務めましたが、そこではナース服を着た踊り手達のパフォーマンスがありました。リーマンショック後の経済的混乱のなか労働党党首となったジェレミー・コービンもその路線でしたが、党内政治で引きづり下ろされてしまい(ケン・ローチも党員資格を剥奪されました)、現在の労働党はもうちょっと中道寄りで社会主義勢力からは評判悪いですよね。ただ、保守党がズタボロすぎて、ふつうに次の選挙で与党になりそうですが。

作品はとても感動的な舞台に仕上がっていて、最後は思わずホロっとしてしまいました。。

演劇の英語は、結構聞き取れるときと、一切わからないシークエンスで差が激しいのですが、まぁ大体何やってるのかはわかるようになっているし、舞台装置がなかなか複雑で視覚的にも面白い舞台になっていたと思います。日本では映画は見ても、お芝居はほとんど見てこなかったのですが、うーん確かに演劇の世界に憧れる人たちの気持ちはわかるというか、映画のような中途半端にリアルな舞台装置では醸し出せないような情感がありますよね。医療がほぼ民間依存のアメリカの人々がこれを見てどう思ったのかはちょっと気になりました笑

上映前に時間あったので、近くの公園で読書。排除ベンチなし!



 

 

土曜日は、セクシー田中さん事件の調査報告がアップされたタイミングで、チラ見するつもりが最後まで読んでしまい、日が暮れてしまいました。

人が亡くなっているので、あまり軽はずみなことは言えませんが、ある事件が具体的にどのような経緯で起きたのかを詳細に掘り下げて記述していく、あるいはそれを読み解くというのが好きなんですよね。ここでこういう事があって、互いの印象が悪くなって、とか、力関係がこのように働いて、とかを順番に読み解いていくのが。

今回の件については、そもそも原作者と製作側でジェンダー問題への理解のレベルに差がありすぎた、などの総括も可能なのだろうと思いますが、実際にここまでこじれてしまって精神的に追い詰められるに至った経緯については、関係者間の伝達の方法であったり、契約段階での明文化の不徹底だったりといったことがポイントにはなるのだと思います。

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リウマチ・膠原病の患者さんは、長いこと治療している人がたくさんいるので、30年前のカルテまで遡って、経過を追うことも稀ではありません。でもそれを面倒くさがらずにやると、例えばいまのカルテにメモ書き程度に書いてあることが、実は非常に重要だったり、あるいは単純に間違っていたりということがわかります。もちろん、これは単にカルテを紐解くだけでは不十分で、その都度患者本人に当時の経過を思い出してもらったりしながら、当時の状況をありありとvisualizeできるようにするのがゴールです。そういうのが楽しくてしょうがない人は膠原病診療に向いていると思います。まぁなので、内容そのものはしょーもないと思いつつも、週刊誌の詳細な取材とかは好きで読んじゃいますね。